DOKONI IKOUKA(中編)
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10月6日  乗車船時間 11:26

牟岐6:44(531D)7:02海部7:08(538D)9:41徳島10:11(よしの川3号)11:34阿波池田12:35(バス)14:00川之江14:18(しおかぜ5号)16:04松山16:26(623レ)18:08五郎18:26(741D)18:50内子18:55(742D)19:17五郎19:23(625レ)19:28伊予大洲20:05(うわじま11号)20:21八幡浜22:35(1642D)

 5時前、気動車のエンジン音で目を醒ます。よく眠れた。顔を洗って、待合室で一服。6時過ぎ、中学生の団体がバスで到着。これから集学旅行だそうだ。どこに行くのか聞かなかったけど、こんなに朝早くから集合とは大変だ。もっとも、そこら辺は若さの強み。元気にはしゃぎ回っていて、何やら怒鳴っている先生の声も消されがち。

 6:44の海部行に乗車。牟岐線は、ここいらでは一段高い所を走っているので、街の様子がよくわかる。牟岐・海南・海部共に、けっこう大きな街。山と海の間の狭い平地に、たくさんの家が立ち並ぶ。大きなスーパーや病院もあるし、海や空もきれいだ。こういう所で子供時代を送れる人は、東京なんかで生まれた人より少しは運がいいんだろうな。7:02、海部着。

 ここから南に下ると室戸岬なんだけど、今回はそこまで足をのばす時間がない。7:08発538Dで引き返す。牟岐−中田間は昨日乗ってるとは言え、闇の中の事なので、景色を見るのは今日が初めて。もう少し海際を走っているのかと思っていたら、海岸線はほとんど見えず、山ン中ばっかり。おまけに土曜日とあってどんどん混んでくるし、まいってしまった。中田で小松島線と出会うと、徳島はもうすぐ。

 徳島での30分はモーニングを食べて終わり。急行よしの川3号に乗る。車内は5分の入り。四国三郎が少しづつ狭くなるのを右手に見ながら、阿波池田に向かう。天気も回復してルンルン気分。ところがどっこい、池田に着く直前、車内放送で「土讃線不通」を告げた。あちゃ〜。池田で確認したところ、「踏切事故で琴平−阿波池田間不通。開通見込み不明。高知方面へは、現在停車中の高松行急行を折り返し運転。琴平方面へは、多度津行代行バスを運転」との事。高知へ向かう当方、ヤレヤレと思って急行に乗り込み発車を待つが、一向動く気配なし。1時間程かかると言う。これでは予土線に間に合わないので計画変更。予土線は明日に回し、今日は内子線を片付けることにして、時刻表と相談。川之江行バスに乗る事にし、時間まで市内を歩く。阿波池田と言えば、何と言っても池田高校が有名だが、駅から離れていて、残念ながら行けなかった。

 路線バスの車窓ってのは、列車とは一味違って、これで結構面白い。子供連れの母親が乗り、病院帰りの老婆が降りる。木洩れ陽の映える山逢いの道。ちょっとした偶然と気まぐれで乗る事になったバス。それはそれでいいもんだ。旅とはハプニングを楽しむものだから。川之江からの特急は12分遅れ。土讃線不通の影響らしい。瀬戸内沿いを走る予讃本線。車窓ものんびりしている。家は多いし、海岸線に林立するクレーンの群れ。松山は3分延着。四国一の大都市だけあって、駅前はにぎやか。しかし25分では、お城に行くにはチト時間不足。今回こればっかだな。四国へはもう1度来るぞ!

 松山からは50系客車で五郎へ向かう。松山までの平野と打って変わって、こちらは断崖絶壁の連続。カーブは多いし、スピードも上がらない。駅ごとに小さな集落があるけれど、海と絶壁の間のわずかの土地に、家が十数軒あるだけ。瀬戸内に浮かぶ小さな島々に夕暮れが近づき、かすんだ海が赤く燃えている。何となく羽越本線の笹川流れあたりを思い出すが、ここには、あの日本海の厳しさはない。どこまで行ってものたりのたりだ。空いた客車。心地良い風。こうして、つかの間ながら全ての現実を捨てて、自分の存在の幸福に酔っていられるのは、旅の喜びの一つであろう。あるいは先輩の言葉なんてのは単なるきっかけで、僕を国鉄完乗へと導いたのは、日中線や豊肥本線の客車の窓から見た、夏の日の夕焼けだったのかも知れない。

 五郎から内子線へ。外はもう真っ暗。家々の明りが美しい。五郎に戻って、再び予讃線に乗る。伊予大洲で途中下車したが、街は駅から離れていて、待合室でウダウダしただけ。八幡浜では駅前のコンビニでスシを買い、待合室でTVドラマを見た。近松の原作を江戸時代を舞台に描きながら、それを現代劇として成立させた演出が見事。22:35、1642Dに乗る。ガラガラ。

225 牟岐
226 徳島本
227 内子
残り 15線区 915.8km

10月7日  乗車船時間 14:27

(1642D〜いよ2号)3:36高松5:03(221レ)7:52大歩危8:09(土佐1号)9:20高知10:30(南風1号)12:30中村12:45(南風4号)13:23窪川14:00(845D)16:10宇和島21:10(1642D)22:28八幡浜23:05(フェリー)

 松山着0:13。5分停車。ここからこの列車は急行いよ2号となる。お客もどっと増えた。年寄りが多い。しかしまあ、夜行列車も48泊目(他に夜行バス2・夜行の船6)ともなれば、混んでいようと関係ない。寝る。

 高松の手前で目を醒ますと、何と超満員。あのなあ、いくら宇高連絡線の乗換口は前の方が近いからって、たかだか4両編成だぜ。何でガン首揃えて荷物抱えて、前のハコへやって来るんだよ。あ〜、うっとうしい。高松着。連絡線への乗換え客を尻目に改札口を出る。次の列車まで1時間半。時間があるので顔を洗って髭を剃っていると、変な兄ちゃんが話し掛けて、四方山噺となる。○○が☆☆で××××などと言う話をした。旅先の駅でこの手の話をするのは初めてだ。

 5:03高松発。外はまだ暗い。でもあたたかい。が、土讃線に入って外が明るくなる頃から、少しづつ気温が下がって来た。大歩危で途中下車して、後続の急行が来るまであたりを歩いたけど、えらく寒いし風は強い。おまけに思った程景色は良くない。山は深いけど水量が少ないんだ。飯田線や磐越西線の方が上。ひどい目にあった。ただ、この先高知までの車窓は中々だったけどね。山は深いし、スイッチバックは連続してるし。もっとも、こっちも半分寝てたから、良く覚えてないんだけど・・・。

 高知は日曜日に市が立ちます。今日は日曜日です。昨日の土讃線の事故のおかげで、こいつを見物する事が出来た。しかしすごいね。鮮魚・野菜・果実・菓子・日用雑貨の店がわんさ。魚やら干物やら大福やら靴やら花やらサトウキビやらキュウリやらが山と積まれ、たくさんの人出の中で売り子が声を張り上げる。1時間ではとても全部見れなかったけど、活気があって楽しかった。土讃線の事故に拍手。サバの姿ずしを買って駅に戻る。

 特急南風1号の車内は暑かった。221レの中で震えていたのがウソのよう。この季節は晴れると暑いし、山ン中で曇ったりすると寒い。どうかすると、1日のうちで冷房の効いた列車と暖房の効いた列車と、両方乗ったりする事もある。この南風も、少し冷房が効いているようだ。窪川から先、中村線に入ると青い海が見えて来た。蒼い空と青い海。でも、やっぱり暑い。

 中村も駅前は何もなし。市街地は駅と離れてるらしい。地方都市では良くあるんだ。折り返しまで15分しかない。とにかく今回は乗りつぶしだけ考えて旅してるんで、面白そうな街でも中々ゆっくり出来ないのは辛いね。中村線を引き返して窪川へ。小さな街をポクポク歩く。こうやって列車待ちの時間を利用して、たくさんの待ちを歩いてきた。観光地とは縁のない、地元の人達だけが訪れるような小さな街。留萌、長万部、日高町、久慈、羽後本荘、坂町、十日町、烏山、糸魚川、中津川、亀山、舞鶴、防府、三次、都城、吉松、諌早、etc.。そして又、ローカル線の終点の駅たち。でも、そういう街にも人々が住み、人々が生活している。東京に生まれ東京に育った僕にとって、頭では分かってはいても、その事を自分の目で見てこれたのは大きかった。スーパーでブドウを買って予土線に乗る。

 予土線は四万十川沿いに走るって言うから、さぞや秘境なんだろうと思っていたが、意外とそうでもなかった。沿線に結構家が立ってる。そうして2・3駅ごとにある大きな集落では、小学校の運動会。ここいらでは、運動会って奴は単なる学校行事じゃあない。それは、村を上げてのお祭りなんだ。家中総出で学校に集まり、1日を過ごす。都会の、運動会と言う名の管理教育の発表会とは訳が違う。しかしいい天気でよかったね。ブドウを食べる。

 予土線では。もう一つドラマがあった。車内で知人と話し込んでいたオッサン、話に熱中しすぎて、降りる駅を乗り過ごしてしまった。発車後すぐに気付いたオッサン、あわてて前に走って行き、運転室をドンドン叩いて「停めろ!停めろ!」。停らないとなると今度は車掌の所へ行って直談判。結局車掌は列車を停め、「線路を歩いて下さい。30分位で着きます」。次の列車が2時間後だからこそ出来る芸当。

 宇和島では5時間の大休止。荷物をロッカーに入れて街を歩く。ここは商店街が大きい。ブラブラ歩いていたら銭湯があったので入る。やっぱり風呂はいいねえ。しかし同じ銭湯と言っても、東京と宇和島ではだいぶ違う。特に異なるのは、男湯と女湯の間の仕切。身長が180cmありゃ覗けるよ、こりゃ。う〜ん、もう少し長身に生まれたかった。 風呂から上がってのんびり夕食を取り、駅に戻る。待合室は1642Dを待つ人がちらほら。

 昨日八幡浜で乗った1642Dを、今日は八幡浜で降りる。ここからフェリーで九州へ。駅から港は結構あって、夜の街を歩け歩け。何とか間に合ったけど、タクシーを使えば良かった。フェリーの乗客は30人程。僕以外は皆クルマと一緒。波は静か。月は真ん丸。佐田岬の明りがきれい。海が月明りに輝いている。

228 土讃本
229 中村
230 予土
231 予讃本
これで四国はおしまい 残り11線区  494.0km

10月8日   乗車船時間 15:57

(フェリー)2:00臼杵3:11(日南)6:37小倉7:07(日田〜由布1号)11:14大分11:35(火の山4号)15:40三角15:45(534D)16:34熊本21:14(有明30号)22:54博多23:59(かいもん)

 臼杵港着の20分前に放送で起こされる。ねむい〜。やっぱり夜行4連荘は効くなあ。臼杵駅へと歩く。夜風が肌を刺す。無人の街を丸い月が照らしている。動いているのは自分1人。こーゆーのも気持ちがいい。待合室で1時間待って「日南」に乗る。ボックスに身を沈めて3時間。すいていたし、よく眠れた。やっぱり12形はいい。

 小倉着6:37。この駅も何度も来たなあ。一度、周遊券をみどりの窓口に置き忘れて冷汗をかいたしね。朝飯に「あなごめし」を買って、日田彦山線の快速「日田」へ。もっと長いと思っていたら2両編成。おかげで高校生やらおばさんの団体で一杯。座れた事は座れたけど、ロングシート。ロングシートで食べる駅弁はつまらん。やっぱりボックスを占領して、外の風を受けながら食べたいよ。低くてなだらかな筑豊の山々を見ながら進む。日差しがやたらと暑い。添田から先が初乗区間なんだけど、とりたてて見る所はない。夜明で久大本線に入り、日田で博多から来た「急行由布」と併結。ここでやっとすいた。しかし「日田」の2両は終点まで行かず、途中の湯布院で切り離し。博多からの車両に移ったら8分の入り。湯布院からの車窓がちっとはマシなのが救いではあるが、混んだ列車はいやじゃ〜。

 だが、大分からの「急行火の山4号」も満員だった。豊肥本線も久大本線と同じく、大分寄りが未乗なので、よく景色を見ておくべきなのだが、車窓がつまらない上に満員と来ては、メゲてしまってうつらうつらしてしまった。

 竹田まで来たら、突然ガラガラになった。ラッキー。ボックスを1つ確保して、アイスクリームを買う。美味。ここから阿蘇のカルデラにかかる。ディーゼルエンジンの音が高くなり、列車のスピードが落ちた。木々が落とす陰の中、ノロノロと外輪山を登って行く。結構山深い所を通っているのに、窓の脇には田んぼや畠が広がっているあたりは、やはり九州だ。長いトンネルを抜けると、外輪山の内部に入り込む。ここからはカルデラの内部に向かって、一直線に駆け降りる。このあたりは圧巻。何と言っても、阿蘇は外輪山の上から望むべき地だ。宮地着。これで豊肥本線の未乗区間は終わり。

 少しホッとしたせいか、眠くなる。立野のスイッチバックを過ぎたら、うつらうつら。気がついたら熊本だった。列車はこの後、鹿児島本線を少し走って宇土から三角線に入る。6年前、バスから線路を見ながら走った道路を、今日は横目に進む。道路の向こうは海、のはずなのだが、満月のためか海岸線は遥か遠く。砂浜に取り残された船はちらほら。

 少しホッとしたせいか、眠くなる。立野のスイッチバックを過ぎたら、うつらうつら。気がついたら熊本だった。列車はこの後、鹿児島本線を少し走って宇土から三角線に入る。6年前、バスから線路を見ながら走った道路を、今日は横目に進む。道路の向こうは海、のはずなのだが、満月のためか海岸線は遥か遠く。砂浜に取り残された船はちらほら。

 三角は5分の折り返し。でも、折角来たんだしと思って改札口を出てみた。そこは一枚の絵だった。明るい陽光。碧い海。緑の島。白い家。景色って奴は、曇り空の下ならどこでもそれなりに見える。でも、快晴の下で絵になる風景なんて、そうザラにはない。1本見逃して、駅の周囲を歩いてくるんだった。疲れてて、つい弱気になっちまったい。まだまだ真の旅人にはなり切れないな。

 熊本に戻って、荷物をロッカーに入れ、チンチン電車で辛島町へ行く。ここは熊本の中心地。お城も近いし、大きな商店街が広がっている。ここをブラブラ。ラーメン屋を見つけて入る。後で知ったが、ここは結構有名な店らしい。なかなか美味だった。一口に九州ラーメンと言っても、博多と熊本と鹿児島ではだいぶ違う。どこが違うかは、まあ食べ比べて下さい。

 「有明30号」は3割の入り。闇の中を突っ走る。博多で1時間、待合室で過ごす。九州の駅の夜の待合室は、実にスリリング。酔っ払い同士は口ゲンカをしてるし、ヤーサンとおぼしき人はウロウロしてるし。

 
232 日田彦山
233 久大本
234 豊肥本
235 三角
残り7線区 280.4km