Big Island 旅行記 前編(2001.7.13-21)


・後編へ  ・トップへ戻る  ・1つ上に戻る

*ハワイ諸島/ハワイ島について

 地球上には、数千万年に渡って断続的に噴火を繰り返す場所(Hot Spot)がありますが、ハワイ諸島もこのHot Spotに属します。ただし、噴火をする場所は同じでも、島を載せたプレートが年に数mmの速度で移動しますから(プレートテクトニクス、いわゆる大陸移動)、地図で見ると火山島が一直線上に並びます。ハワイ諸島には7つの大きな島がありますが、西に行くほど古く、東に行くほど新しくなります。今回行ったハワイ島は最も東にあり、キラウエア火山が噴火を繰り返しています。

 ハワイ諸島は北アメリカ大陸から4,000km、一番近い島からでも2,000km近く離れているため、極く稀な偶然によって島にたどり着いた植物と鳥が独自の進化を遂げました(ハワイ諸島には、陸棲の哺乳類・爬虫類はいませんでした)。約1,500年前にポリネシアからヒトが移住し、更に約200年前にキャプテン・クックによる再発見があってから、西洋人がやって来ました。

 再発見(1778年)の頃には、ハワイはいくつもの豪族が乱立していましたが、カメハメハ大王により統一され(1810年)、ハワイ王朝が開かれました。しかし、ハワイ王朝は長くは続かず、アメリカに併合されます。当時のハワイはサトウキビの生産が盛んでしたが、西洋人の持ち込んだ疫病のため、ハワイの人口は激減していました。その労働力不足解消のため、各国から移民を受け入れます。このため、現在のハワイは、日本を含む各国からの移民により、人口的なマジョリティのいない状態になっています。

 ハワイ島は四国のほぼ半分の面積を持ち、これは他の6島の合計よりも大きく、ハワイ諸島最大の島です。州名との混同を避けるため、現地では「Big Island」と呼ばれる事が多い様です。ハワイ州の人口は約120万人ですが、ホノルル/ワイキキのあるオアフ島に87万人が住み、ハワイ島は17万人、マウイ島は14万人です(残りの島は数万人〜数千人)。

 ハワイ島には、マウナケア(4,205m)、マウナロア(4,169m)の富士山よりも高い2峰の他、ファラライ(2,521m)、コハラ(1,670m)、キラウエア火口群の5つの山があります。この内、キラウエアは世界で最も活動的な火山であり、過去数百年、ほぼ休む事なく溶岩を流し続けています。マウナロアは、まだ時折噴火しています。他の島の山は既に噴火を止めています。


13日(金) フレックスを利用して、会社を出たのが17時前。成田空港着は18:40。JALの窓口は、団体用は大混雑だけど個人窓口はガラガラ。日本らしいなあ。チェックイン後、VISAのラウンジでビールを1杯。それから出国手続き。

 今日は汗もかいたし、シャワーを浴びたかったんだけど(成田には300円でシャワーを浴びれる設備があります)、満員で入れず。誰しも考える事は同じか。仕方なく水で絞ったハンカチで体を拭く。21時、定刻にテイクオフ。ここで時計を19時間戻す。現在ハワイは午前2時。

 機内食の後、4時間程寝る。軽食で起こされ、9:40、10分遅れでタッチダウン。コナの空港は、聞いていたとは言え中々のローカル空港。ターミナルビルもないし、ドアを出て階段をおりると、係員に誘導されて歩いて大きなテントに入る。ここが入管。簡単な質問を受けると、次の部屋には荷物が並んでいた(ターンテーブルなど無し)。荷物を受け取り、さてレンタカーを借りるか。

 ハーツのゴールドカードで予約していたので、借りるのはすぐ。10時半出発。さて、ハワイ島には西のコナと東のヒロの2つの町があります。今日の泊まりはヒロで、コナからヒロへは北回りの19号と南周りの11号があるけれど、北回りを選択。天気は良いけど、山は雲の中なのは残念。空港を出た辺りは植物のほとんどない溶岩原(後で聞いたら、この辺は砂漠気候らしい)。所々木が密集している所があると、そこはリゾートホテル。人工的な緑がちょっと気持ち悪い。

 30マイル程行った辺りで19号は内陸に道を転じるけれど、真直ぐヒロに向かったのではホテルのチェックインには早すぎる。で271号を海に沿って走る。車は少ないし、海はきれい。快適なドライブ。30マイル行った所が道の終点。この辺はポロル渓谷なんだそうだけど、それを見るには遊歩道を歩かなければならない。暑いし、成田でシャワー浴びれなかったから体がベタベタするし、写真1枚撮って車に戻る。

 10マイル程戻って、250号に入る。この道はコハラの中腹を抜ける道。標高1,000mの峠を越えるワインディング。海岸線を見下ろして走る。19号に合流して2マイル行くと、ワイメアの町。ガイドブックに従ってショッピングセンターに入る。もっとも、スーパー1軒と食堂数軒、お店10軒くらい。ここは、島では3番目の町なんだけど、何せ島全体で17万しか人口がいないからなあ。さて、時刻は13時前。何か食べようかと思ったけど、睡眠不足だし、お腹が一杯になったら居眠り運転しそう。トイレに寄り、スーパーで絵葉書を買って出発。

 
左:ポロル渓谷 右:250号の展望台から 

 後はヒロまでの50マイルを一直線。ヒロに近づくに従って雲が出始め、やがてポツポツ、そして土砂降り。やっぱり島の東側は雨が多いねえ。ヒロに着いた時には雨は上がっていた。ダウンタウンからちょっと行ったバニヤン通りには数軒のホテルが並んでいて、今回ちあきさんに取ってもらったナニロアホテルもその1軒。15時前、チェックイン。

 さて、シャワーシャワー。それからスーツケースから荷物を出す。売店でMEHANAと言う地ビールを買って来て1杯。これで人心地。ちあきさん家に電話するも、誰も出ない。買い物かな? ホテルの周りを散歩。近所のホテルにも売店やレストランがあって、結構過ごしやすそう。さて、お腹も空いたし、夕食にしよう。結局、ナニロアのレストランでバフェ(ビュッフェ、日本式に言えばバイキング)。ローストビーフとロブスターが美味。

 部屋に戻り、再度ビール。それからちあきさん家へ電話。明日以降の事は明日の朝に再度電話で話す事になった。さすがに疲れたし、今日は寝るとしよう。長い1日だったな。では、おやすみなさい。


14日(土) 8時20分、ちあきさんからの電話で目が覚めた。8時に目覚ましを仕掛けたつもりだったんだけど、上手くセットできてなかったらしい。とりあえず、14時半にちあきさん家を訪問する事になり、後で家までの地図をFAXしてもらう事に。

 さて、朝飯にしよう。隣のホテルの売店は、お土産やスナックと共にコーヒーやサンドイッチも売ってる。ここでコーラとホットドックを注文。ホットドックはレギュラーかジャンボか、と聞かれ、「ジャンボ!」と答えたのが失敗の元。誰がこんな巨大なのを食うんだ!?

 それからプラプラとヒロのダウンタウンへ。ダウンタウンには駐車場が少ないとガイドブックにあったので歩いて行ったけど、騙された。。。 いっぱいあったぞ。汗をかきかきダウンタウン着。ヒロでは朝市が立つのですが、特に水曜と土曜が賑やか。歩いて行くとテントが立ち並んでいて、食品、花、服等々、色々売ってます。食品は、畑で取れたもの以外にも、おにぎりやトンカツ弁当なんかもあって、へぇ、でした。ランプータンを買いました。

 暑いので、涼を求めてツナミ博物館に入る。過去にヒロは何度も津波の被害を受けているそうです。ヒロ湾は東に向かって開けていいるため、被害にあいやすいとか。かつてはベイサイドまで商店が立ち並んでいたのですが、今は海岸から30mは道路と芝生。更にダウンタウンの端からバニヤン通りに向かって半マイルは、海岸から100m程は芝生やサッカー場。何もないだだっ広い空間が広がっていて違和感を感じたけど、ここも昔は商店が立ち並んでいたのに、津波の被害で立ち退いたそうな。

 
左:ヒロのダウンタウン 右:ダウンタウンのはずれ

 ツナミ博物館を出て、再びヒロのダウンタウンをブラブラ。コロニアル風と言うのかな、50年くらい昔のアメリカ映画に出て来そうな町並み。そろそろ昼食にしようか。1軒のカフェに入り、Ahi(マグロ)のサンドイッチ(もちろん、刺身ではなくステーキです)を注文。結構美味。10ドルはちょっと高いけど。ホテルに戻り、シャワーを浴びてからちあきさん家へ。現在、すばる望遠鏡で働いているH女史(彼女はちあきさんとは高校からの仲とか)と、H女史のお友達のK子女史とご対面。K子女史はLA在住で、友達の結婚式でホノルルに来たついでにハワイ島まで足を伸ばしたそうです。

 ともあれ、ちあきさんに「鎮魂花」の本を渡して、今回のミッションの主目的は達成。ちあきさんは今日は出られないとの事で、H女史、K子女史と出発。

 ヒロから南回りでコナに通じる11号は、しばらく内陸を走ります。海辺を走る道もあるのですが、キラウエアの溶岩で寸断されています。普通の観光コースはキラウエアの火口の所から海岸線に下り、溶岩の南側からアプローチますが、今日は北側からのアプローチ。H女史の四駆で熔岩の上をガタガタ進む。乗せてもらっている身では文句も言えませんが、H女史の運転はあんまり上手くないですなあ。後輪が流れた時にカウンターを当てられないので、ズルズル滑ってスリリング!!

 行ける所まで行って車を降りる。そこからは熔岩の上をテクテク歩き。真っ赤な熔岩が流れる所は残念ながら見られませんでしたが、固まった熔岩の下を流れているらしく、1kmくらい先の海岸線からモウモウと水蒸気が上がっています。そこを目指して、熔岩の岩場を1kmくらい進む。水蒸気が上がっている所から50m位まで接近。アベックが来ていて、ラブシーンを演じていました。アメリカらしいなあ、と思って良く見ると、2人とも女性。アメリカらしいなあ。水蒸気の所からは時折「ボン!」と言う音と共に、黒いものや赤いものが飛び散ります。小規模な水蒸気爆発ですな。中々迫力あり。ここで大量の熔岩が水に落ちて大規模な水蒸気爆発が起きたらお陀仏だなあ。


水蒸気爆発

 小雨が降って来たので、車に戻る。H女史は、「タイミングが良ければ、真っ赤な溶岩流が見れるのに」と言いますが、灯台は十分満足でした。ヒロに戻り、有名なシーフードレストランで夕食。灯台はマヒマヒを食べました。今日も中々疲れた。出発前の1週間は、飲み会3回、コンサート1回、札幌日帰り1回で疲労が溜まりまくってたので、体力が回復してない。ホテルに戻り、MEHANAビールを引っ掛けて、22時にお休みなさい。


15日(日) 9時起床。結構途中で目が覚めたりして、あんまり深い眠りじゃなかったせいか、まだ眠いなあ。昨日ちあきさんから推薦された、2つ隣のホテルのベーカリーに行く。ただ、「美味しい」と言われた紫イモのケーキはありませんでした。残念。コーヒーとべーグルとケーキを買って、目の前の公園で海を見ながらもぐもぐ。

 ハワイでは昔は乳児の死亡率が高かったため、1歳の誕生日を迎えると「めでたい」と盛大にお祝いする風習があって、今でも残っているそうです。で、今日はそのパーティがあって、灯台も混ぜてもらう事になりました。指定された場所に行くと、駐車場、体育館、滑り台とジャングルジムを合わせたような遊具、それに屋根と2方向だけ壁がある集会所みたいなのがありました。遊具では1歳くらいから小学生低学年くらいまでの子供が20人ぐらい遊んでいて(色んな人種がゴッタ煮状態で、さすがハワイ)、集会所では大人が50人くらい、準備をしていました。

 ここで、ちあきさんの御主人やkeikoさんご夫妻にご挨拶。しばらくしたら準備が出来たようで、皆料理をプレートに取って、もぐもぐ。しばらくしたら、主役の子供の母親、夫、前の夫(!)と言った編成で、コンサートやフラやら。「やっぱりアメリカよねえ。」とちあきさんが感心する事しきり。

 一旦ホテルに戻ってシャワーを浴び、ちあき家へ。しばらくするとH女史もやって来て、H女史の運転で、3人でいざマウナケアへ。BGMちあきさんの持って来たモーニング娘。「灯台がモー娘。が好きだから」と言っていたけど、実はちあきさん本人が隠れモーオタと見た。

 山頂には雲がかかっていて、天気はダメかなあ、と思ってましたが(ちなみに昨夜は荒天で、山頂では雪が降ったとか)、進むに連れて天気が回復。よっしゃあ!。標高2,800mのオニヅカ・ビジターセンターで休憩(山頂に向かう人は、ここで30分以上の休憩を取る規則になってます)。ここから先はダート。あの〜、後輪流れてるんですけど。。。

  
左:マウナケア山頂のドーム群  
中:「すばる」主鏡の下の灯台  
右:マウナケア山頂(4,205m)登頂

 すばる望遠鏡着。H女史にドームの中を案内してもらう。その後、車でちょっと行った所から、10分弱の登りで4,205mのマウナケア山頂へ。そろそろ夕暮れ。マウナケアの三角錐の影が、ヒロの方向に落ちている。すばるに戻って夕食(ちあきさんが昼間のパーティの残りを持って来てくれました。安上がりな旅だねえ。航空券だってマイレージのタダ券だし)。今夜の観測隊の人達が登って来た。ご苦労様です。やがて日没。マウイ島の彼方に陽が落ちてゆく。


4.200mの残照

 ちょと頭の芯が痛いかな。ロレツの回りも悪い。高山病の症状が出て来た模様。規則で、山頂には14時間以上いてはいけないそう。あと、毎日通っているとそうでもないけど、久しぶりに来るとてきめんに高山病が出るとか。

 薄明が終った頃に建物から出る。さっきまでは長袖の上にトレーナで耐えていたけど、さすがに寒いので、防寒具を借りて着る。「すばる」に着いた時から、ちあきさんに「やせ我慢するな」と言われてたけど、灯台は超暑がりだし、そもそも天文なんてのは耐えるもんだ(趣味でやってる人間にとってはね)。ついでに言うと、趣味でやってるからこそ星座を知ってる。多分、今「すばる」で観測している人達は、星座なんて北斗七星とオリオン座しか知らないだろうな(注:厳密に言えば、北斗七星は星座ではなく大熊座の一部)。

 低空にすこしモヤがかかっていて、それが町の明かりを反射しているのがちょっと残念だけど、さすがに星空は迫力がある。高度20度の北極星。逆立ちした北斗。西には獅子、牛飼い、乙女、冠、烏と春の星座。天空には琴、白鳥、鷲、蠍、海豚、矢、蛇使い、蛇、ヘラクレス。秋の星座にはちょっと早いか。南十字も上の星だけ見えている。そして流れる銀河、暗黒帯。またたかない星が印象的。

 そろそろ戻ろうと言う事になり、再びH女史の運転でオニヅカ・センターへ(公用車なので、他の人は運転できない)。ガソリンが心細いとて二駆にしたので、後輪が流れる流れる。何とかガソリンは持った。オニヅカ・センターで給油。ここは夜になると40cmくらいの反射望遠鏡で星を見せてくれる。いくつか見せてもらったけど。何を狙っているのかあんまり分らなかった。

 ここから一路ヒロへ。ところが、疲れが抜け切っていない事もあったのか、もう少しでちあき家と言う所まで来て気持ちが悪くなってしまった。車を停めてもらい、オエ。やれやれ、申し訳ない。ちあき家で自分のレンタカーをピックアップし、ホテルへ。帰り着いたのは23時過ぎ。今日はビールを飲まないで寝るとするか。


16日(月) 昨日の事もあったので、今日は1日のんびりする事に。9時起床。隣のホテルの売店でコーヒーとサンドイッチの朝食。今日から灯台の泊まっているホテルでは、何かの学会が始まったらしい。数理生物学とか書いてあるけど、怪しげな学会だなあ。

 一昨日に熔岩を見に行った際、ホテルから2マイル位の所のにショッピングセンターがあることを見つけたので、そこに行く。ウォルマートでビーチサンダルとお土産用のチョコレート/カレンダーを買う。それからフードコートで昼食。ハワイ名物ロコモコ(5ドル)。ご飯の上にハンバーガーパテと半熟の目玉焼きを乗せ、グレービーソースをかけたもの。全てをぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べる。見てくれは悪いけど美味!

 ホテルに戻り、ベランダでビールを飲みながら、ちあきさんが貸してくれたハワイ関係の本を読む。册数も多いので、一気に読み飛ばす。最も、日頃から活字は大量に読んでいるので、普通の人の10倍の速度で読んでも普通の人より内容を把握する自信はあるんだけど。1時間1冊のペースで3冊呼んだら眠くなった。15時半からお昼寝。やっぱり、リゾートライフはこうでなくちゃ。

 19時半、目が覚めた。シャワーを浴びて、隣のホテルのレストランで夕食。エビと魚のコンボ(18ドル)。ここは20時からフラのショーあり。踊っているのは生徒クラスだけど、入れ代わり立ち代わり何人も出て来るし(やっぱり、上手い下手はありますね)、食事代だけで見られるのは悪くない。

 ホテルに戻り、ビールを飲みつつ今度は自分が持って来た本を読む。今回持参したのは、植物のたどってきた道(NHKブックス)、海の世界史(講談社現代新書)、物語 中東の歴史(中公新書)、物語 古代エジプト人(文春新書)、インカを歩く(岩波新書)。こうしてみると、歴史物が多いですな。結局、帰るまでに全部読み倒したけど、面白かった。今まで、日本史関係は結構色々読んだけど、これからは世界史にも手を広げるかな。