お茶会三題    ・トップへ戻る  ・1つ上に戻る


9月21日

 この日の朝は、知床半島から登る素晴しい朝日()で明けました。空は雲ひとつない快晴。オホーツクを 渡る風が心地良い。こんな日は、思わずワクワクしちゃうね。今日の宿である「ましゅまろ」までは、ここ「網走流氷の宿YH」からなら車で2時間の距離だ し、何もアセる事はない。ノンビリ行こう・・・。などと行ってノンビリしていたら、YHのレンタMTBは全部出払ってしまいました。天気が良いので、能取 岬まではチャリで行こうと思ったのに。ま、いいか。ノマドに乗っていざ出発。

 5分ほど行った水族館の所で、MTBに乗った、同宿だった土屋さんに会いました。「今日 はどこ行くの?」「時間がないから、この辺見た後YHに戻って・・・」「そうか。僕は岬行って、サンゴ草見て」「サンゴ草!?」(ここでキラリと目の光る 音)。何でも、昨日サンゴ草を目指してチャリを漕いだのですが、途中で雨が降ってきてしまい、泣く泣く引き返したのだそうです。「・・・乗ってく?」「う ん!!」ノマドの後席をたためばMTBが乗ることは、昨日実験済み。エイと押し込んで能取岬へ。

 そうして岬でコーヒーを入れ、やはり同宿だったチャリダーの男の子を捕まえて、3人でお 茶会。自分で言うのも何だけど、実に美味いコーヒーだった。風と空と景色とがこれだけ揃った下でのコーヒーは、雌阿寒の山頂以来だなあ。ああ、1日中でも ボーっとしていたい。

 しかしまあ、そうもいかず、岬を後にサンゴ草群生地へ。3度目にして、初めて太陽の下で 赤いサンゴ草を見ることが出来たのでした。その後、常呂に足を伸ばし、チラシズシの昼食。ガイドブックの歌い文句通り、死ぬ程量が多かった。ゲプッ。

  

左:能取岬 中:サンゴ草 右:土屋さん

 再びサンゴ草を横目で見ながら、ノマドは網走へ。これなら丁度線釧網線に間に合う。よ かった、と思ったら「天都山行きたい」「いいけど、列車間に合わないかも知れないよ」「まあ、いいから」そりゃまあ、いいけどさ。でも間に合わなかった ら、川湯(土屋さんの宿泊先)までアッシーなんだろうな、これは。

 とは言え走り慣れたオホーツクの道。最短距離を突っ走って、発車3分前に北浜の駅に飛び 込んだのでした。



9月24日

 目が覚めると、外は冷たい雨が降っていました。ま、上陸以来5日間はずっと好転続きでし たから、そろそろ天気が崩れてくるのも、これも仕方がない事でしょう。大雪の紅葉を()一昨日に片付けておいて正解だったね。と、僕自身はナットクしていたのですが、世の中にはそれで納まらない人もいま す。

 塩尻さんもその1人。サホロYHは5回目なのに、晴れたのは2月にきてXCスキーをした 時だけ。あの時は東雲湖は雪の下だったので、ぜひ1度、夏の東雲湖を見てみたいとサホロを再訪したのに、とぶつぶつぶつ。

 旅の初日に「なかしべつYH」で会って多和平までアッシーした時、「僕は23日にサホロ に泊まる予定」と言っておいたので、「いるかなあ」と思って来てみれば、やっぱりいたのでした。昨夜、「ねえ、東雲湖行きません!?」と言われて、東雲湖 もずいぶん行ってないし、久し振りに行こうかとも思ってはみたけれど、この天気じゃ仕方ないなあ。と言う様な常識は、彼女には通用しませんでした。然別湖 まで行って雨なら諦めるかと思ったのですが、ますます闘志が湧いた様子。売店で安いカッパを買い込み、「さあ、行きましょう」。東雲桟橋が修理中で遊覧船 が寄らないため、本来なら桟橋から片道30分の東雲湖なのに、今日は然別湖の南岸を90分(往復3時間)も歩かなければなりません。僕は登山用に革の登山 靴とフード付きカッパを持って来たから良いのだけれど、彼女はスニーカーにジーンズ。おまけにカッパは上半身のみ。大丈夫かねえ。

 

左:塩尻さん(中標津YHにて) 右:霧の東雲湖

 しかし、さすがに大学時代はオリエンテーリング部だっただけあって、靴とズボンをびしょ 濡れにしながらも、こちらの心配を物ともせず、ズンズンとクマザサを掻き分けついて来ます。80分後、誰もいない東雲湖に到着。さて、折角だからコーヒー でも入れましょう。冷えた体に、暖かいコーヒーが染み通る。霧に閉ざされた東雲湖を独り占めして、とても贅沢な気分。

 ここで塩尻さんが、ナキウサギが見たいと言い出したのでした。確かに東雲湖の周辺はナキ ウサギのポイントなのですが、何せこの天気。今は小康状態ですが、いつまた降り出すか。そんな訳で、とりあえず今来た道を引き返してノマドまで戻り、然別 湖近くの別のポイントに行ってみました。けれども天気が悪いせいか、ナキウサギも中々顔を見せてくれません。サホロ連泊の塩尻さんと違い、美馬牛まで行か ねばならない僕はそろそろタイムリミット。「あっ、いいです。私、バスで帰りますから。行って下さい。」「・・・」。何も言うまい。「気をつけて。風邪ひ かない様にね」。


9月25日

 美馬牛の朝は、厚い雲に覆われていました。十勝岳連峰は雲の中。時折陽差しは洩れてくる ものの、あんまり良い天気は期待出来そうにありません。今日で最終日なのに。

 いつもなら朝飯を食べて、さて出発となるのですが、「トロルドハウゲン」の居心地があま りに良かったので、ついズルズル。そのうち宿泊客もいなくなって来るし、そろそろ行かねば。と思ったら、やはり最後まで残っていた女の子2人が、MTBを 借りようとして「もう残っていません」と言われていたのでした。1人で回るのもつまらないし、エイと乗っけて拓真館へ。

 写真を見た後、さらに歩いて10分程の丘に登り、コーヒーを入れる。ついでに、道端に落 ちていたトウキビを茹でて、丘の上のお茶会。トウキビは予想された通り飼料用のデントコーンでしたが、まあまあ食べられる。それに、こんな所でコーヒーを 飲むなんてのは2人にとっては初めてだったらしく、エラく感動してくれました。山のテッペンから岬の突端まで、ずいぶん色々な所でコーヒーを入れて来まし たが、こんなに喜ばれたのは初めてでした。ただ、空が灰色なのと風が冷たいのがタマにキズ。

 

左:美瑛の丘 右:お茶会

 そうして拓真館に戻って車を拾い、再び美馬牛へ。ところが丘の上でノンビリしすぎたらし く、富良野線にギリギリで間に合いそうにありません。まあ、いいや。20kmなんて北海道ではひとっ走りだし、富良野までお送りしましょ。

 しかし美馬牛で降り出した雨は、富良野に着く頃には土砂降りになっていました。レンタサ イクルを借りると言っていた2人でしたが、とても自転車に乗れる天気ではありません。バスと言っても本数は少ないし。で、麓郷の近くのジャム農園まで送る 事に。20種近いジャムをあれこれ味見して、ジャムの乗ったアイスクリーム(この後、札幌で食べた雪印パーラーのよりよっぽど美味)を食べて。甘党の僕と しては、満足満足。

 この間も雨は一向納まる気配はなし。今日はこれ以上の観光は無理そう。時刻表を見れば、 次の滝川行までは1時間あります。エーイ、どうせ通り道だし、滝川の駅までお送りしましょ。で、R38を北上。道は割合混んでいて、あまりスピードは出せ なかったけど、鈍足の根室本線となら大差無し。1時間のリードを保ったまま、滝川着15:45。天気は晴れ。変な天気。でもまあ、この妙な天気のおかげで 可愛い女の子2人と1日過ごせた訳だから、文句は言えないか。むしろ感謝しなくちゃね。

 さすがにこの先は、函館本線の特急の方が早いので、名残は惜しいけど、16時の特急に彼 女達を見送ったのでした。



*コーヒーはちゃんとしたレギュラーです。